「並べる形」廣峯神社本殿・拝殿

複数のキャラクターを並べる
廣峯神社は兵庫県広峰山の頂上にある古社で、牛頭天王(ごずてんのう)の総本山と言われています。近世まで牛頭天王は素戔嗚尊(すさのおのみこと)と同一視され、庶民の信仰を得ていました。この素戔嗚尊は多面的な性格を持つ人物で、廣峯神社には彼の3つの魂である和魂(にぎたま)・荒魂(あらたま)・奇魂(きたま)を、それぞれ本殿・荒神社・薬師堂に分けて祀っています。一人物の複数のキャラクターを別々の建物で奉るという建築手法は、実に興味深いものがあります。

堂を並べる
急な石段を登りきると正面に特徴的なファサードの拝殿が現れます。まず、向拝の位置が中央からずれていて左右非対称です。また神社建築の屋根は檜皮・杮葺きか銅板で曲線的なシェイプが多いのですが、これは直線的でシンプルな瓦屋根です。向拝の庇や虹梁・懸造を覆う板壁やその下の石の基壇など、多くの水平ラインが重なり、何かモダンな印象を与えます。一方、本殿は拝殿の奥に棟を平行にして並んでいますが、その全体像は拝殿からは把握できず、吹きさらしの外陣と朱塗りの内陣だけが見えます。本殿と拝殿の間には細長い外部空間があり、拝殿庇→身舎→外部空間→本殿庇(外陣)→身舎(内陣+内々陣)という空間のレイヤーが壮観でとても美しいです。

神と仏を並べる
本殿内々陣の中央8間は、3つの神座と2つの納殿に区画されています。神座の部分だけ柱スパンが広く、そのリズムは拝殿にも及んでいます。実はこの内々陣、近世以前は神と仏を交互に並べて祀ってあったそうです。神々を並列させる神社はありますが、こんな例は初めて見ました。牛頭天王は薬師如来の垂迹(現世での仮の姿)と見なされていたそうなので、神と仏の並列は自然なことだったのでしょう。あくまで序列をつけない内陣の立面は、現代の私たちにはむしろしっくりくるデザインです。疫病と戦乱に翻弄されていた時代、神も仏も一体化させてご加護を得たいという願いが、建築に直截に表れているように感じます。

廣峯神社本殿・拝殿 概要
・国指定重要文化財
・所在地:兵庫県姫路市広嶺山52
・規模:[本殿]桁行十一間、梁間四間 [拝殿]桁行十間、梁間四間
・建築年代:[本殿]1444年 [拝殿]1626年(再建)