光の小屋

竣工年 2014
所在地 神奈川県逗子市
主要用途 写真スタジオ
延床面積 33.12m2
主要構造 木造


即物と象徴

既存住宅の庭に建つ、写真家のスタジオである。気候が温暖な関東地方南部の丘陵地にある。空間は撮影に必要な機能から割り出された4.5m×7.2mのワンルームのみ。建築メディアに発表される中で、もっとも小さい事例のひとつであると言えるだろう。この計画がはじまったとき、私たちの中には即物的な小屋のイメージが浮かんだ。

厳しい建設費で大きな体積を確保するために、木造の切妻屋根が採用された。その時、水平の梁が撮影の邪魔になる。ここでは、明快な幾何学的ルールによって切妻屋根を多面体に変形し、その折線上にある3本の棟木が屋根を支えることで、梁のない空間を木造でつくっている。棟木には多面体の垂木が複雑に取り合うため、様々な角度に対応しやすい丸太を採用した。外壁には、舞台セットの内外が反転したような木造の軸組みが、半透明のポリカーボネイト板越しに透けて見えている。

写真撮影のスタジオには、絵画のアトリエと同様にやわらかい光がたくさん必要だ。自然光だとコントラストが強すぎて、人物が不自然に写ってしまう。そのため、約45度のトップライトと垂直のハイサイドライトを組み合わせ、角度の異なるふたつの面から拡散光を取り入れた。反対側には、緑豊かな庭からの直接光のために、横長の開口部がある。内部は常に外部と同じくらい明るく、閉ざされた室内なのに外にいるような不思議な浮遊感を与える。この空間は、内部と外部のふたつの性格を併せ持ち、内外区分という建築の普遍的な課題に対して、これまでとは異なる解答の期待を抱かせる。

最初の建築である「中国木材」以降、即物的な架構は私たちの主要なテーマである。この丸太の棟木は、スタジオとして要求される条件を即物的に解決していった結果でありながら、即物性と相反する象徴性を伴って現れた。丸太と象徴性は、伝統的すぎるとして孤立する恐れがあることは承知している。それでも、この原始的な材料の持つ現代の意味を、いつか考えてみたいと思っていた。その試みは、人物を自然に見せる人工の光を媒介として、即物性と象徴性を兼ね備えた、新しい丸太の架構と光の空間を生み出すことになった。